広大な豪州大陸
大陸全体が一つの国であるという唯一の国、Australia。
その面積は約770万平方kmで、約38万平方kmの国土を持つ日本の約20倍、6大陸中最小といっても欧州をすっぽり飲み込むほどの広さを誇ります。
その広大さから、都市間の主な移動手段は飛行機です。主要都市SydneyとPerth間は飛行機ですら約5時間も要します。
病院から遠く離れた地域の患者を小型飛行機で移送する「空の救急車」とでも呼べる航空救急「Royal Flying Doctors Service」が世界で初めて実施されたのも、同国ならではです。

大陸横断鉄道の旅
豪州では乗車時間も移動距離も長く不便な鉄道の旅はとうの昔に廃れましたが、今なお愛され、世界でも有数の人気を誇る2つの豪華な長距離鉄道があります。
豪州でもっとも有名な列車は、南氷洋に面した都市AdelaideとArafura海(南太平洋)の玄関口であるDarwin間2,979kmを2泊3日で結ぶ、大陸縦断鉄道The Ghan号。
それと同様に人気なのが、印度洋側のPerthと太平洋岸(Tasman海)のSydney間4,352kmを3泊4日で結ぶ、豪州最長距離の大陸横断鉄道Indian Pacificです。
Sydneyに住み始めて数ヵ月が経過し、Oceania最大の都市で快適な生活を満喫していますが、ここは豪州大陸のほんのちっぽけな一地域に過ぎません。
豪州で仕事をするにあたり、この大陸のことをもっと知りたいという想いから、途方もない長距離を旅する鉄道の旅をすることにしました。

Indian Pacificの選択
豪州大陸横断鉄道の旅は、当初、2年間の海外赴任を無事に終えたら、自分と家族へのご褒美と考えていて、日本への帰国間際に乗車する計画を立てていました。
でも、よく考えてみると、2年後に予約できるか分からないし、財政危機になっていたり、そもそも休みが取れる保証もありません。
幸いというか不幸とも言うべきか、休日勤務が多い僕の職場では、海外赴任した最初の月だけで振替休日が1週間もたまり、この調子ではどれだけ休日勤務が増えるのか心配ですが、その反面、振替休日をまとめて取得することが出来たら、まとまった休みが取れて旅行できます。

Great Southern Railwayのweb siteをたまたま覗いてみたら、Indian Pacificは子供のSchool Holidaysの期間中に、PerthからSydneyへ向かう東行きの便に空席があり、しかも割引して販売されています。一方、人気のThe Ghanはだいぶ先まで予約が埋まっていて、そもそも繁忙期はだいぶ高額になるので乗車は諦めます。
もしかしたら、これは今Indian Pacificに乗車しておけと言う天の声ではないのか。いつもながら自分に都合よく解釈した僕は、さっそく家族と仕事の予定を確認し、家族の了解を取り付けました。
席が売り切れないことを祈りながら、予約画面を何度も確認して予約しました。
この列車は4人部屋がなく、二人部屋か一人部屋の利用となります。
Indian Pacificの場合、最上級のPlatinumと通常のGoldの2 classになります。
Platinum 最上級の二人部屋
Gold Twin 二人部屋
Gold Single 一人部屋
PlatinumはGoldの約2倍の料金です。また、繁忙期と閑散期では値段が1.5倍くらい違います。年末年始の夏季が最も人気で予約が取りづらく、冬季は安く空席が目立ちます。Platinumが大人気で、だいぶ先まで予約が埋まっていて、早目の予約が必要です。
代金を支払って予約が完了したものの、会社からすぐに連絡が無いことから、もしかしたら騙されたのかと焦りました。でも、そこは時間がゆったり流れる豪州、日本人のようにせっかちで心に余裕がない人は豪州の生活と優雅な鉄道旅行など楽しむことは出来ません。
航空券も予約して、旅の準備を始めました。
しばらくして会社から旅行案内がpdfで届きました。
Travel Documentsには旅の概要と注意点が書かれています。
Booking and Travel Conditionsは旅行規約です。
この列車の旅を検討されている方のために、書類を掲載します。


Indian Pacificの概要
走行距離:4,352km
所要日数:3泊4日
所要時間:65時間
列車の全長:774m
列車の重量:1400ton
走行平均速度:時速85km
最高速度:時速115km
行程(東行き)
1日目:西Australia州の州都Perthを出発し、Outbackと呼ばれる豪州大陸の内部に見渡す限り広がる赤土の広大な荒野へ入って行きます。最初の停車駅は、西Australia州のGold rush town、Kalgoorlie。世界最大の露天掘り鉱山、Super Pitを訪問します。
2日目:西Australia州と南Australia州に跨がる「木がない」という意味の広大なNullarbor平原を横断し、鉄道で直線距離が世界一長い区間を駆け抜けます。南Australia州に入り、人口わずか2人という荒野の中に隔絶された辺境の町Cookに停車します。
3日目:南Australia州の州都Adelaideに停車し、市内を回るbus tourで車窓から観光し、Adelaide Central MarketsやAdelaide Ovalを訪れ、朝食をいただきます。列車は南Australia州の緑あふれる穀倉地帯を進み、再び荒野を走り出すとNew South Wales州へ入ります。夕方、かつて鉱山の町として栄えたBroken Hillで停車し、Outbackの芸術家たちの作品を鑑賞します。
4日目:大分水嶺山脈や東部高地と呼ばれるGreat Dividing Rangeの山を登り、雄大な風景が魅力の世界遺産Blue Mountainsを通過し、終点のSydneyへ向かい、長い旅が終わります。
参考まで、東行きと西行きでは停車駅(観光地)が異なります。東行きはKalgoorlieに停車、西行きはBlue Mountainsに停車します。Sydneyに住む僕らはBlue Mountainsにすぐ足を伸ばせるので、滅多に行けないKalgoorlieを見学できる東行きで良かったと思います。それに、列車名のとおり、印度洋から太平洋に向かいたかったこともあります。