豪州大陸縦断の旅 3日目

Coober Pedy to Ayers Rock Resort

荒野の黎明。この日の目的地は、Uluru-Kata Tjuta National Park。豪州の象徴である、Uluru(別名Ayers Rock)を目指しmす。この国立公園内で唯一宿泊できるのがAyers Rock Resortで、Coober Pedyからの走行距離は約800kmもあります。800kmなんて、日本では長距離旅行になる距離ですが、この広大な面積を誇る国では大した移動距離ではありません。天候に恵まれたらUluruにも登りたいので、夜明け前に走り始め、日の出を待ちます。

どこまでも続く直線道路

Uluru

Stuart Highwayを左折し、Lasseter Highwayを西行してUluruへ向かいます。

しばらく進むと、頂上が平らな大きな岩塊がところどころに現れてきます。Uluruに似たような岩があり、もう到着したと喜んでいたら、別の岩だったり。

Ayers Rock Resortから約20km、荒涼とした平原の中に突如現れる巨大な一枚岩Uluru。その存在感に圧倒されます。標高862.5m、地表からの高さ348m、長さ3.6km、幅1.9km、周囲は9.4kmにも及ぶ堂々たる巨大な岩の塊です。先住民が聖地としたことに納得です。
地表に出ているのは一部分で、地中には深さ数kmにわたり埋まっていおり、約50kmも離れたKata Tjutaの巨石群と地下で繋がっているそうです。

豪政府はかつて先住民からこの土地一帯を取り上げましたが、先住民の人権が回復されてきた1985年に所有権を返還しました。先住民はUluruを聖地として崇めており、観光客の登山禁止を求めてきました。登山口にはそのことを示す看板などが設置され、観光客にこの聖地を粗略に扱って欲しくないこと、登山を思いとどまるように訴えかけていました。国立公園の運営協議会は、Uluruが先住民にとって聖地であることを配慮し、2017年から登山の禁止を決定し、2019年10月26日から登山を禁止することが発表しました。最近では観光客のうち登山するのは20%程度まで落ち込んでいるとのことです。

僕らは登山禁止前に登っておきたいと考え、運良く天候に恵まれたので、登ることにしました。
Uluruにはいつでも登山できる訳ではありません。Uluruへの道路は夜間通行止となっています。登山口は施錠されており、次の理由で臨時に通行止めになることもあります。
3時間以内に雨や嵐が予想される時。山上部の最大瞬間風速が基準以上の時。雲が頂上より下にある時。気温が36度以上に上昇しそうな時。所有者から文化的な理由による要請があった時。
年間365日のうち300日は登れなく、登頂率について一番確率が低い月は13.4%、一番確率が高い月は55.8%だそうです。

登山口に到着すると、あらためてその大きさと急峻さに驚かされます。地表から壁がそそり立っているようで、登れそうな場所は登山口しか見当たりません。勾配がきつすぎて、登山経験者以外には登山はとても危険だと思いました。登り始めてすぐ鎖が出てきます。岩は磨耗して滑りやすく、雨で濡れてなくても鎖がないと危険です。実際に登山中に命を落とした人は、これまで数十人にも上ります。多くの方が強風で足を滑らせ、滑落死しているそう。

登山未経験者と思われる中国人と韓国人の団体が前を登って行きましたが、見るからに危なっかしく、いつ滑落してもおかしくないような感じでした。かくいう僕も鎖の手前で強い風により帽子を飛ばされ慌てました。滑落死した方の多くが、風で飛ばされた帽子に手を伸ばして足を滑らせたというのも頷けます。

Uluru登山は標高差348mに過ぎませんが、登山口の急勾配で体力を消耗してしまい、幾つもの小さな丘を上下して頂上を目指すため、累積標高差が結構あり、標高以上にたいへんな山だと感じます。

頂上は平らで方位盤が設置され、近くの町からの距離が記されています。

豪州人や豪州在住の日本人の中にも、Uluruに登りたがる日本人を批判する向きもあります。
日本人はかつて山を崇め奉る山岳信仰を持ち、山や巨岩、大木を信仰母体としてきました。山は食料となる木の実や山菜、動物を育み、建築材料や燃料となる木を育て、農耕に欠かせない雪解け水で田畑を潤し、雪形は作物の種を蒔く時期を教えるなど、生命の源であり、日本人は山と深く関わって生きてきました。山はまた、四季折々に美しい姿で人々を魅了し、登頂するには未知と危険に満ちた存在でもありました。そのため、日本人は山に対する感謝と畏敬の念を抱き、説話や文学まで生まれたのだと思います。
山岳信仰が一般的でなくなり、登山は趣味だけで行われる時代となった今でも、多くの登山愛好者が頂上で手を合わせる姿を見かけます。日本人の多くは、山岳信仰が心のどこかに残っている影響かどうか分かりませんが、山を神聖なものと考える人が多いと思うので、Uluruに登る日本人が興味本位だけで登山し、先住民の尊厳を踏みにじっているという批判は当たらないと思います。

遥か彼方にKata Tjutaの巨石群が見えます。

登山禁止直前には、禁止前に登っておきたいという世界中からの観光客で賑わったことが報道されました。

11月から4月は雨季(夏)、5月から10月は乾季(冬)です。夏は暑い上に蝿が煩く、冬は寒く、春と秋に訪れるのがお勧めです。

宿泊地 Outback Pioneer Lodge

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