豪州大陸横断鉄道の旅 3日目

Indian Pacific Eastbound Day 3

3日目の朝を迎えました。
この日は早めの朝食で、Continental Breakfastの軽食でした。
この日の午前中は、Adelaideに一時停車して、Off Train Excursion(Adelaide観光)が行われます。Adelaide観光中にあらためて朝食が提供されるため、列車内では軽い朝食が振る舞われました。

長女はNZから観光に来たご婦人に可愛がってもらいました。

天気はあいにく雨交じりの空模様ですが、久しぶりに都市の灯りを見て、少しほっとします。

Adelaide駅に近づくと、車両基地が見えてきました。
Indian PacificやThe Ghanの客車や機関車がたくさん並んでいます。
AdelaideはIndian PacificとThe Ghanを運行する鉄道会社の拠点となっているからです。

Adelaide
Off Train Excursion

駅に停車すると、Off Train Excursionのために用意された専用車へ案内されます。Busの車窓から市内の主要建築物を見て回り、Adelaide Ovalのtourに参加します。

南Australia州の州都Adelaide。Adelaideは、全豪の都市で5番目に多い人口約137万人を有する大都市で、中心市街地は碁盤の目のように整然と区画されています。美しい石造りの街並みの周辺は、緑あふれる公園に取り囲まれ、独逸人たちが作り上げた、美しく清潔で趣のある文化的な都市です。

Adelaideの街並みは、英国の技術将校(測量技師)で都市計画家であったWilliam Light大佐(1786年4月27日~1839年10月6日)によって作られました。豪州の主要都市は、英国の流刑植民地として作られた街が多い中、Adelaideは自由移民によって作られた街です。母国を何らかの理由で出ざるを得なかった人々や、新大陸に希望を見出した人々が、理想郷として作り上げた多文化の街です。

Adelaide Ovalに到着しました。
この建築物は豪州最大規模のcricket競技場です。Cricketは、日本ではあまり馴染みのない競技ですが、野球の原型と言われる豪州と英国の国技で、競技人口は世界2位で野球より一般的なのだそう。

このAdelaide Ovalは、5万人以上の収容能力を誇る巨大な競技場で、Adelaideを象徴するiconのひとつです。Cricketの国際試合やAFL(Australian Football League)の試合が行われるだけでなく、Hockey、蹴球、野球、Tennisなど各種sportsの試合、それから世界的な音楽家による大規模なconcertも行われています。

ここでは、guideによるtourが行われており、競技場をじっくり見学することができます。とても広い観客席と、その上に張り出した船の帆のように大きな屋根は、見応えがあります。競技場内外には、豪州の有名選手の銅像が飾られるなど、人気のある選手が紹介されています。

この競技場は市街地中心部から川を挟んで北側に立地しており、周辺はたくさんの緑あふれる公園と競技場などが集積された、好立地の場所です。

朝食会場はCathedral Roomという展望の良い部屋で、その名の通り、目の前はPennington Gardens越しにSt Peter’s Cathedralが見えます。

軽めの食事でしたが、美味しくいただきました。

帰路も大通りを車窓から観光し、Adelaide駅に到着しました。

駅の待合室には、Indian Pacificの象徴たる尾長犬鷲の立派な銅像がありました。翼を広げた尾長犬鷲は、Adelaideを中心にSydneyとPerthの両方へ向かって延びる線路を表しているかのようでした。

Adelaideをもう少し観光したところですが、発車時刻になったので再び乗車します。

Adelaide駅を起点に、Red centreという大陸中央部の荒野を突っ切り、大陸最北部の都市Darwinを結ぶ、豪州で最も有名な観光列車’The Ghan’にも乗ってみたくなります。2年間の赴任期間中には叶わぬ夢ですが、いつか機会があればぜひ乗車してみたいです。

Adelaide駅を出発した列車は、もと来た線路を戻り北上します。

Port Augustaまで戻らず、Crystal Brookから北東へ進路を向け、Gladstone、Jamestown、Peterboroughを経由してNSW州へ向かいます。

列車は、南Australiaの大平原に広がる肥沃な農地を突っ切り、速度を上げて進みます。

どこまでも続く草原、牧歌的な風景、地平線と空の境がくっきりと分かれ、はかり知れない広さを持つ豪州大陸を実感します。

再び昼食の時間になりました。

豚肉と鶏肉の料理に舌鼓を打ち、色鮮やかな果物と甘いお菓子を頬張る長女は、とても幸せそうです。

NSW州に近づくと、緑が疎らになり、Outbackの荒野が広がります。

長時間の乗車で、子どもたちはさすがに飽きて、有り余る体力を持て余した長女は動き回っています。

この列車は、仕事を辞めた高齢の夫婦などが、記念に乗車する利用が多いと思われます。僕らの車両に同乗している乗客は、みなNZ人の高齢者で、なかには80歳以上と思われる方もいました。小さな子どもは見かけないので、長女はとても可愛がられ、おばあさんたちからよく声をかけられていました。でも、英語が理解できない長女は、無表情で反応がなく、両者とも戸惑ってしまいます。

この列車の楽しみ方は、車窓に移り変わる豪州の雄大な景色、美味しい料理、陽気な乗務員の温かいおもてなし、停車駅でのOutback体験と小旅行等々たくさんあります。
それらと同じくらい楽しいのは、乗客同士の語らいです。世界各国から訪れた、様々な文化的背景と価値観を持ちながらも、鉄道の旅を愛する人々が、雄大な豪州大陸に魅了され、一期一会の出会いを楽しんでいます。車内で知り合った幾人かの方々と会話を楽しみました。NZから団体で観光している高齢者、印度から移住された家族、Sydneyの大学で学ぶ学生などと、
長女は女子大生に可愛がってもらい、長男は印度人の家族と一緒にpuzzleを楽しんでいました。

再び荒野を走り出し、夕方にNew South Wales州へ入ります。

地平線の彼方に沈む、息を呑むような美しい夕日を見ることが出来ました。

Broken Hill
Off Train Excursion

NSW州に入ってすぐ、かつて鉱山の町として栄えたBroken Hillで停車し、tourに参加しました。
日が暮れて時刻だったので写真が撮れませんでしたが、この街は米国西部開拓時代の映画に出てきそうな、典型的な開拓時代の雰囲気を濃厚に残す街並みでした。
街中にある博物館というか雑貨屋のような建物に案内されると、建物の奥に珍しい展示物がありました。

そこは大きな円形状の部屋で、壁面には荒野の風景が描かれ、床にはBroken Hill郊外のOutbackの風景を模した地形と植生が再現してありました。
荒野の中にあるLiving Desert and Sculpturesという芸術作品も描かれています。
まるで現実にOutbackに飛び出しかのような錯覚に陥るほど、実物のような世界が視野いっぱいに広がっていました。
本物と見間違うほど精巧な完成度で、Outbackの芸術家の作品に驚きました。

別の部屋にはお土産がたくさん並んでいて、子どもたちは小物を買いました。

Broken Hillは、New South Wales州西端のOutbackにある辺境の小さな町です
人口は17,000人強、”Oasis of the West”、”Silver City”などと呼ばれています。
最寄りの主要都市のAdelaideから511km、Melbourneから837km、州都のSydneyから1,143kmも離れています。NSW州の最西端に位置することから、同州ではFar West地域と呼ばれています。

この地域には、欧州人の入植前、豪州の先住民族であるWiljakali族が住んでいました。
19世紀中ごろに初めて欧州人が訪れ、牧畜民が定住し始めます。
その後、銀鉱石の発見により鉱業都市として発展し、銀と亜鉛、鉛鉱床は世界最大の埋蔵量を誇り繁栄しました。第二次世界大戦後に最盛期を迎えたものの、掘削が容易だったので鉱脈を掘り尽くし、主要な企業は撤退しました。今でも採掘を続けているのは一社のみで、町は衰退しています。
そのため、地方自治体は観光や農業分野に力を入れており、牧羊産業の中心地でもあります。
この町は、州都Sydneyから約1,000km以上も離れていることから、南Australia州の州都Adelaideが経済圏との結びつきが強く、時間帯も南Australia州と同じUTC+9:30を使用しています。
2015年に稼働したBroken Hill太陽光発電所は豪州最大規模の発電所です。

駅に戻ると、乗務員が笑顔で迎えてくれました。
Indian Pacificの拠点であるAdelaide駅で、乗務員の交代が行われたようで、我々の車両を担当する乗務員の顔ぶれが一新されています。
乗務員は皆とても明るく気さくで、日本人のおもてなし以上に細やかな気配りが出来ていて好ましく感じました。

この列車の最後の晩餐です。

この日も美味しい料理をいただきました。
この贅沢な時間が明日で終わってしまうのかと考えると、すでに名残惜しい気持ちでいっぱいです。

ゆっくり時間をかけていただく食事ですが、優雅な食堂に不釣り合いなほど列車は激しく揺れます。食卓の皿が落下するほどではありませんが、とても揺れるので飲み物はwine glassの中で波うち、倒れてしまわないか心配する程です。乗務員が揺れる列車の中で料理や飲み物を一滴もこぼさず上手に運ぶ技術は、素人ではなかなか真似出来ないと思います。

列車が揺れるせいか、お酒の酔いも早く回る気がします。お腹がいっぱいになり、showerを浴びて休みました。

豪州大陸横断鉄道の旅 前書き

豪州大陸横断鉄道の旅 4日目

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